就業規則とは
就業規則とは、労働者の労働条件や職場の秩序等を定めた会社の規則のことをいいます。10人以上の労働者を常時使用する事業場では、就業規則の作成が労働基準法により義務付けられています。法令に違反する就業規則を作成することは許されませんが、法令の範囲内であれば、就業規則において労働者と使用者の間の契約内容を定めることができ、具体的には労働時間、休日、賃金や賞与、退職、懲戒、解雇などの重要事項を定めることになります。労働者が就業規則に違反した場合は、就業規則に基づいて、懲戒や解雇などの処分を受けることがあります。
就業規則を作成すべき理由
就業規則を作成すべき理由には、以下のようなものがあります。
①法律上の義務を果たすため
労働基準法では、10人以上の労働者を常時使用する事業場に対して、就業規則の作成を義務付けています。労働基準法に違反して就業規則を作成しない場合や届出を怠った場合には、30万円以下の罰金といった刑事罰や行政指導、処分を受ける可能性があります。
②労働者と使用者のトラブルを防止するため
就業規則は、労働者と使用者の間の契約の一部となります。就業規則によって、労働条件や職場の秩序が明確になります。これにより、労働者と使用者は互いに権利と義務を認識することができるようになります。また、就業規則は、労働者に対して公正かつ適正な扱いをするための基準となります。これにより、不当な解雇や賃金未払い、あるいはセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどの不適切な行為を防止することができます。
他方で、労働者にとっても就業規則は明確な規範となりますので、就業規則に抵触する行為をすれば、懲戒や解雇などのペナルティを負うことになります。このように、就業規則は労働者の不適切な行為の防止にも有効となります。
③労働環境や生産性を向上させるため
就業規則は、労働者に対して職場で守るべきルールや目標を示すものです。これにより、労働者は自分の役割や責任を理解しやすくなります。また、就業規則は、労働者に対して福利厚生や評価制度などのメリットも示しています。これにより、労働者は仕事に対するモチベーションや満足度を高めることができます。
さらに、就業規則は、労働環境の改善のためのルールを示しており、労働環境が悪化することを防止する効果があります。
就業規則のこれらの効果により、労働者の労働環境の改善や生産性の向上に結びつくことになります。
就業規則について弁護士に相談すべき理由
就業規則は、会社にとって以上のように非常に重要な意味合いを持っており、会社の「憲法」ともいえるほどの大事な文書といえます。しかし、多くの会社では、その重要性が認識されていません。ご相談いただく建設業の会社の多くが、インターネットでダウンロードできる「雛形」をそのまま使っています。
しかし、就業規則は、会社にとって労働者に守らせるべきルールを定めるものですから、そのような「雛形」では、会社の実情からかけ離れたルールになってしまいます。そうすると、いざ会社が就業規則に基づいて処分を行おうとしても、思うように処分を行えないことになりかねません。また、会社の対応が就業規則と異なっていた場合に、労働者から就業規則に反すると反論されてしまうというリスクもあります。
そして、就業規則の内容が法令に違反していたり、誤った手続により定められたものであれば、就業規則は無効と判断されることになってしまいます。
そのため、就業規則は、法律の専門家が作成を行うことが非常に重要です。労務トラブルを多く扱う弁護士であれば、裁判などの法的手続において、就業規則のどの部分が争いになる可能性があるのか、そのような争いを防止するためにはどのように対応すればよいのかを熟知しています。
従業員とこれまで全くトラブルがなければ、そのような就業規則でもこれまで問題が出てこなかったかもしれません。しかし、建設業の会社において、労務トラブルはつきものです。労働者とトラブルになってから就業規則を変更するのでは遅すぎる以上、まだトラブルになっていない現段階から、法律の専門家である弁護士に依頼して、しっかりとしたルール作りをすることが、会社を守るために極めて大事なことなのです。
弁護士に相談するメリット
就業規則について弁護士に相談すべき理由はこれまで挙げてきたとおりです。法律の専門家である弁護士に相談することにより、会社を「守る」就業規則を作ることができるのは当然です。
しかし、労務トラブルを多く扱う弁護士であれば、「攻める」就業規則を作ることも可能です。
通常、雇用契約書や労働条件通知書では、労働条件の最低限の部分(賃金や労働時間、休日など)についてしか定めないことが一般的です。それに対して、就業規則では、労働者全員に対して適用する細かなルールを定めることが可能です。「攻める」就業規則では、弁護士の監修の下、会社の思いや考え、労働者に守ってもらいたいルールを明確に定め、労働者がいつもその就業規則を意識しながら働くことを目指します。
建設業の会社の社長さんの中には、就業規則を従業員が閲覧することに対して良く思わない方もいらっしゃいます。これに対し、「攻める」就業規則では、発想を転換し、従業員全員に積極的にその就業規則を見ることを求め、ルールを守らせることを目指すものとなります。
弁護士だからこそ、「雛形」とは異なる骨太の就業規則を提供することができるのです。
Last Updated on 2023年10月4日 by ace-construction-law
この記事の執筆者 弁護士法人エースパートナー法律事務所 地元の人々が気軽に相談できる街の法律家であるとともに、豊富な事件処理経験を基に、全国の大企業や個人、官公庁からも依頼をお引き受けしています。 |