1.建設業におけるM&Aとは
建設業は、建設工事の完成を請け負う事業であり、建築工事や土木工事などさまざまな種類の工事を行っています。建設業界は、日本の経済活動の約10%を占める巨大な市場であり、国内外で多くのプロジェクトが展開されています。
M&Aとは、mergers and acquisitions(合併と買収)の略で、企業が他社の株式や資産を取得したり、自社の株式や資産を譲渡したりすることで、経営資源や市場シェアを拡大したり、事業領域や技術力を強化したりすることをいいます。
建設業におけるM&Aは、近年活発化しており、人材獲得や事業承継、近接異業種間の連携など様々な目的で行われています 。建設業界は、高齢化や人手不足、競争激化などの課題に直面しており、M&Aはそれらに対応する有効な手段のひとつとなっています。
2.M&Aについて弁護士に相談する理由
M&Aは、企業間の契約や交渉だけでなく、法律や税務など様々な分野の知識や経験が必要な、非常に複雑なプロセスです。特に建設業では、建設業法や入札制度など独自の規制や制度が存在し、M&Aに関わるリスクや問題も多岐にわたります。
そのため、M&Aについて弁護士に相談することは非常に重要です。弁護士は、M&Aの各段階で専門的なアドバイスやサポートを提供し、クライアントの利益を守る役割を果たします。具体的には、以下のようなことが挙げられます。
(1)M&Aの戦略立案、ターゲット選定
(2)M&Aの契約書作成や交渉
(3)M&Aのデューデリジェンス(財務・法務・税務等の調査)
(4)M&Aの実行後のインテグレーション(統合)やアフターケア
(5)M&Aに関する紛争や訴訟の対応
3.M&Aに関わるプレーヤーについて
M&Aには、様々なプレーヤーが関与します。主なプレーヤーとその役割については、以下の通りです。
(1)譲渡人(売り手)
自社の株式や資産を譲渡する企業
(2)譲受人(買い手)
他社の株式や資産を取得する企業
(3)弁護士
M&Aの法的な側面を担当し、契約書作成や交渉、デューデリジェンス、紛争対応などを行う
(4)会計士
M&Aの財務や税務の側面を担当し、財務諸表の分析や評価、税務効果の検討、税務申告などを行う
(5)M&Aアドバイザー
M&Aの全体的なプロセスを支援し、戦略立案やターゲット選定、交渉支援、インテグレーション支援などを行う
(6)銀行
M&Aの資金調達や決済を行う
(7)その他の専門家
M&Aに関連する特定の分野の知識や技術を提供する。例えば、建設業では建設コンサルタントや建築設計事務所などが該当する
4.弁護士による法的対処法
弁護士は、M&Aにおける法的な課題やリスクに対処するために、以下のような対応を行っています。
(1)契約書における条項の設定
M&Aの契約書には、各当事者の権利と義務を明確に定める条項が必要です。例えば、保証条項(譲渡人が譲受人に対して自社の状況に関する事実や法律上の問題がないことを保証する条項)、責任制限条項(譲渡人の保証条項違反による損害賠償責任を一定の範囲内に制限する条項)、解除条項(特定の事由が発生した場合に契約を解除できる条項)などがあります。これらの条項を設けることによって、弁護士はクライアントの利益を守るよう行動しているのです。
(2)デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、M&Aの対象となる企業の財務・法務・税務等の状況を調査することです。弁護士は、会計士らと協力してデューデリジェンスに当たり、デューデリジェンスで発見された問題点やリスク要因について、契約書への反映や交渉戦略の立案などを行います。
(3)紛争や訴訟への対応
M&Aは、契約書に基づいて実行されますが、契約書に違反したり、契約書に記載されていない事実が発覚したりすることで、当事者間で紛争や訴訟が発生する可能性があります。弁護士は、紛争や訴訟への対応を行い、クライアントの利益を守ります。
5.弁護士に相談するメリット
M&Aについて弁護士に相談するメリットは、以下のようなものがあります。
(1)専門知識と経験
M&Aは、法的に非常に複雑な問題が絡むことがよくあります。そのため、専門家なしで手続を行うのは極めて困難です。弁護士はM&Aに関する専門知識と豊富な経験に基づき、法的なリスクや問題を正確に評価し、最適な解決策を提案します。
(2)リスク管理
弁護士はM&Aにおける法的なリスクを事前に把握し、適切なリスク管理策を提案します。これにより、クライアントは将来的な問題や紛争を回避することができます。
(3)交渉力の向上
弁護士はM&Aの交渉においてクライアントをサポートし、交渉力を向上させます。適切な法的戦略や交渉のテクニックを活用し、クライアントの利益を最大化します。
(4)リーガル・コンプライアンス
M&Aには法的な規制やコンプライアンスの要件があります。弁護士はこれらの要件を遵守し、クライアントの事業継続性を確保します。
以上が、建設業におけるM&Aに関する概要と弁護士の役割についての説明です。M&Aは複雑なプロセスであり、法的なリスクや問題が存在するため、弁護士の専門知識と経験を活用することは重要です。弁護士に相談することで、クライアントの利益を保護し、M&Aの成功に向けた支援を受けることができますので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
Last Updated on 2023年10月4日 by ace-construction-law
この記事の執筆者 弁護士法人エースパートナー法律事務所 地元の人々が気軽に相談できる街の法律家であるとともに、豊富な事件処理経験を基に、全国の大企業や個人、官公庁からも依頼をお引き受けしています。 |