建設業は、多数の企業が重層的に関わり合う複雑な産業です。そのため、元請業者と下請業者との間では、工事内容や代金、納期などに関するトラブルが頻発しています。こうしたトラブルは、建設業者だけでなく、施主や利用者にも影響を及ぼすことがあります。そこで、この記事では、建設業における元請業者と下請業者が抱えるトラブルの種類と原因、弁護士による法的対処法と相談するメリットについて解説します。
１．建設業における元請業者と下請業者が抱えるトラブルについて
建設業における元請業者と下請業者が抱えるトラブルには、大きく分けて以下のようなものがあります。
・工事代金の未払いや遅延
・工事内容や変更に関する不当な請求やクレーム
・工事品質や瑕疵（かし）に関する問題
・工事遅延や中止に関する問題
これらのトラブルは、契約書や工事仕様書などの書面が不十分だったり、口約束だけで済ませたり、工事を丸投げしたことが原因で起こることが多いといえます。また、建設業界では、一括下請けや多段下請けなどの構造がありますが、これらは契約関係や責任範囲を不明確にし、トラブルを招く要因となります。
２．元請業者が抱える特有のトラブル
元請業者は、施主から工事を受注し、下請業者に一部または全部を委託する立場です。そのため、元請業者は、施主と下請業者の双方からトラブルを起こされる可能性があります。元請業者が抱える特有のトラブルとしては、以下のようなものが挙げられます。
・施主から工事代金の支払いを受けられない
・施主から工事内容や品質に対する不満やクレームを受ける
・下請業者から工事品質や瑕疵（かし）に対する責任を追及される
・施主から工事遅延や中止を求められる
・施主から工事代金の支払いを受けられていないにもかかわらず、下請業者から工事代金の支払いを求められる
・下請業者から工事内容や変更に対する不満やクレームを受ける
これらのトラブルは、元請業者に大きな損害や負担をもたらすことがあります。特に、施主から工事代金の支払いを受けられない場合は、資金繰りが悪化することになり、下請業者への支払いも困難になってしまいます。
一方、下請業者は、元請業者から工事を受注する立場であり、場合によってはさらに下請業者（孫請業者などと呼ばれます。）に工事の一部または全部を委託する立場です。下請業者が抱える特有のトラブルとしては、以下のようなものが挙げられます。
・元請業者から工事代金の支払いを受けられない
・元請業者から工事内容や品質に対する不満やクレームを受け、場合によっては代金支払いの遅延や、工事のやり直しなどを求められる
・元請業者から支払いを受けられていないにもかかわらず、従業員や孫請業者への給与や請負代金の支払いを行わなければいけない
これらのトラブルは、下請業者にみられるものであり、下請業者の規模等によっては、倒産につながりかねないほど重大な問題となりかねません。
３．弁護士による法的対処法
建設業界で起こるトラブルは、専門的な知識や経験が必要なものが多くあります。そのため、自社だけで解決しようとしても、相手方の主張を退けられなかったり、自社の権利を十分に主張できない可能性があります。そのようなときは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、建築物や土木物件などの専門知識だけでなく、民法や建築基準法などの法律知識も有しています。また、弁護士は第三者的な立場から客観的に判断し、法的交渉力も備えています。弁護士に相談することで得られるメリットは次のようなものです。
・法的な観点での契約書や書面等の確認や作成のサービスが受けられる
・相手方への交渉や示談対応を依頼できる
・裁判所への仮処分等の申立てや訴訟提起を依頼できる
・差押え等の執行手続による債権回収を依頼できる
弁護士は、自社の利益を最大限守るために必要な手続を行ってくれます。また、依頼の内容に応じて、可能な限り早期解決を目指して活動を行います。早期解決が実現することにより、時間や費用だけでなく、会社の信用度や信頼も保つことができることにつながるのです。
４．弁護士に相談するメリット
建設業界では、「自分たちで解決しなければならない」という考え方が根強くあります。しかし、「自分たちで解決しなければならない」という考え方は、「自分たちで解決できる」ことを意味しません。自社だけで解決しようとしても、相手方が合理的ではなければ十分な解決は望めませんし、かえって自社が不利益を被る可能性があります。
そのため、弁護士に依頼したほうがむしろ経済的である可能性も十分あるのです。弁護士に相談をしても、必ず依頼をしなければならないわけではありません。困りごとがあれば、まずは建設業に強い弁護士に相談すれば、親身に相談に乗ってくれるでしょう。その上で依頼するかどうかを判断すればよいと思います。
Last Updated on 2023年10月4日 by ace-construction-law
この記事の執筆者 弁護士法人エースパートナー法律事務所 地元の人々が気軽に相談できる街の法律家であるとともに、豊富な事件処理経験を基に、全国の大企業や個人、官公庁からも依頼をお引き受けしています。 |
