未払い賃金対応とは
未払い賃金対応とは,会社と雇用契約を締結している労働者または既に退職した者から行われる,会社に対する未払い賃金の支払いを求める請求への対応を指します。そして未払い賃金に関する事件とは,単に雇用契約で合意した金額(月額の給与など)が支払われていないというケースもありますが,法律事務所でご相談いただくのは未払いの残業代など「実際の支払額よりも多い給与が発生している(残業代など)」ケースが殆どを占めます。
労働者の賃金については,雇用契約時に使用者・労働者双方にとって誤解が生じ得ないように合意をし,入社後も,労働者の勤怠管理を徹底するなど,未払い賃金が発生しない予防策を会社として推進することが望ましいですが,会社としてでき得る限りの施策を講じたとしても,労働者の労働の実態いかんによっては,未払い賃金が発生しているとして労働者等から支払いを請求されるリスクは存在し,このような労働者等からの請求に対してどのような対応をするのかというのは,労働者の多寡を問わず会社にとって身近かつ避けては通れない問題であるといえるでしょう。
未払い賃金対応を放置すると
未払い賃金に関する労働者等からの請求を無視し続けることは得策ではありません。その理由として,訴訟を起こされるリスクが高くなり,書面や証拠の準備,裁判所への出廷などの負担を生じること,労働基準監督署や労働組合に相談され,事態が大きくなることも挙げられますが,労働者等に支払わなければいけない金額に着目すると①遅延損害金と②付加金の存在が挙げられます。
①遅延損害金について
約定の期限をすぎても支払うべきお金を支払わない場合,法律上未払いの金額に対し,支払いが遅延している期間の利息に相当する遅延損害金が発生することが法律上定められています。
民法上の遅延損害金の利率は年3%であり,現職である労働者に対する未払い賃金の遅延損害金は基本的にこの利率が適用されますが,労働者が退職した日以後の期間については「賃金の支払の確保等に関する法律」によって年14.6%の利率が適用されることになります。
②付加金について
未払いの賃金が時間外・休日・深夜の割増賃金(労働基準法37条)など特定の金銭である場合,労働者の請求により,未払い賃金と同一額の付加金(労働基準法114条)の支払いを裁判所から命じられるおそれがあります。
労働者等によっては数百万円単位の未払い賃金の支払いを請求されることがあり,これを長期間放置すれば,未払い賃金だけでなく,高額の遅延損害金及び付加金をも労働者等に支払わなければならなくなる可能性があり,もし未払い賃金の請求を受けた場合には迅速な対応が求められます。
弁護士による未払い賃金対応
弁護士が労働者等からの未払い賃金等の対応を行う場合以下の流れになります。
①未払い賃金の算定
雇用契約書,勤怠管理などの客観的資料にもとづき,労働者の未払い賃金の発生の有無について調査するとともに,もし未払い賃金が発生している場合にはその金額を調査・算定します。(労働者等の給与について固定残業代制度が採用されている場合などには,固定残業代制度の有効性が争われることが多くあります。そのため,必要に応じて法的な検討を併せて行います。)
②労働者等との交渉
事前に調査・算定した未払い賃金の有無・金額を前提に労働者等と交渉を行います。労働者等の主張に対し法的な観点から反論を行い,支払額の減額を説得しつつ和解による早期解決を図ります。
③裁判手続への対応
任意交渉で和解が成立せず,労働者等から訴訟等を起こされた場合,会社に代わり主張書面の作成や証拠化の準備を行い,裁判所に出廷し訴訟活動を行います。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談いただくメリットとして以下の4点が挙げられます。
①正確な未払い賃金が計算できる
給与に関する雇用契約上の約定の内容,労働期間の長短など,労働者等によってはその未払い賃金の算定において,非常に複雑かつ膨大な計算及び法的な検討が必要になることがあり,会社で労働者等に対する賃金を改めて計算し直しても正しい算定がなされない可能性があります。
弁護士にご依頼いただければ,専門家の目線から法的に正しい未払い賃金の額を確認することができます。
②労働者等の主張に対し,法的に説得的な反論ができる
会社で未払い賃金を算定したとしても,法的な裏付けがなければ,労働者等に対し効果的な説得が出来ず,交渉が長期化し,結果として訴訟リスクが生じることになります。
弁護士にご依頼いただきますと,労働者等の主張している未払い賃金の金額がなぜ誤っているのか法的根拠をもって説明することができますので,支払額の減額に応じてくれやすくなり,トラブルの早期解決にもつながります。
③裁判手続に対応する負担が減る
仮に訴訟等を提起された場合,事業活動のほか必要な書面・証拠の準備など同手続きに対応せざるを得なくなるなど会社の負担が大きくなりますが,弁護士にご相談いただければ,専門家が必要な準備,訴訟活動等を代わりに行います。そのため,会社としても余計な対応に煩わされることもなくなり,経営や業務に専念できることになります。
Last Updated on 2023年10月4日 by ace-construction-law
この記事の執筆者 弁護士法人エースパートナー法律事務所 地元の人々が気軽に相談できる街の法律家であるとともに、豊富な事件処理経験を基に、全国の大企業や個人、官公庁からも依頼をお引き受けしています。 |