建設業界は、その特性上、労働時間の管理が非常に重要です。工期の厳守や予算の管理のために、多くの現場では長時間労働が常態化しています。しかし、労働基準法では、労働時間は1日8時間、1週40時間を超えてはならないと定められています。また、これを超える労働は原則として時間外労働とされ、割増賃金の支払いが必要です。
特に2024年4月からは、「働き方改革関連法」により、建設業においても時間外労働の上限規制が厳格化されています。具体的には、時間外労働は月45時間、年360時間までが原則であり、特別条項を適用しても年720時間、月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内といった厳格な基準が設定されています。このような規制を遵守することは、企業にとって極めて重要な課題となっています。
未払い残業代請求をされたらすぐにすべきこと
未払い残業代請求を受けた場合、建設業者がまず行うべきことは以下の通りです。
事実確認:請求された残業代が実際に未払いであるかどうか、労働時間の記録を確認します。タイムカードや勤怠管理システムのデータ、現場の出退勤記録などを確認し、正確な労働時間を把握します。
専門家への相談:労働法に詳しい弁護士に相談し、適切な対応策を検討します。専門家の助言を受けることで、法的リスクを最小限に抑えることができます。
迅速な対応:請求を受けた場合、速やかに対応することが求められます。放置してしまうと、後述のように裁判に発展したり、いわゆるユニオン(合同労組)に従業員が駆け込むことによって団体交渉の対応をしなければならなくなるなど、事態が悪化する可能性があるため、早急に解決策を講じることが重要です。
残業代請求を放置するとどうなる?
未払い残業代請求を放置すると、企業にはさまざまなリスクが生じます。以下はその主な例です。
(1)法的リスクの増大:未払い残業代請求が裁判に発展する可能性があり、企業は裁判費用や法的リスクを負うことになります。裁判で敗訴した場合、未払い残業代の支払いに加え、付加金(未払いの残業代に加え、最大で未払い残業代と同額の金銭の支払いを命じられる)、遅延損害金や弁護士費用なども請求される可能性があります。
(2)企業イメージの悪化:未払い残業代請求が公になると、企業の信用が損なわれる可能性があります。特に建設業界では、労働環境の改善やコンプライアンスの徹底が求められており、企業イメージの悪化は取引先や顧客からの信用を失うリスクを伴うため、企業にとって大きな打撃になることがあります。
(3)従業員の士気低下:未払い残業代の問題が解決されないまま放置されると、従業員の士気が低下し、生産性の低下や離職率の増加を招く可能性があります。特に熟練工の確保が難しい建設業界では、従業員の不満が大きな問題となりかねません。さらに、場合によっては、従業員同士が結託して、複数人で未払い残業代を請求することにより、多額の残業代の支払いを余儀なくされ、会社経営が破綻してしまうリスクもあります。
(4)労働基準監督署からの指導・処分:未払い残業代が発覚すると、労働基準監督署からの指導や処分を受ける可能性があります。最悪の場合、罰金など刑事罰が科されることもあり、企業経営に大きな打撃を与えることになります。
残業代の問題については弁護士にご相談ください
残業代の問題は、企業にとって重大なリスクを伴います。特に建設業界では、労働時間の管理が難しく、未払い残業代の請求が発生しやすい環境にあります。労働基準法や働き方改革関連法に基づく労働時間の管理はもちろん、従業員とのコミュニケーションや適切な対応が求められます。
エースパートナーでは、建設業者の皆様が未払い残業代請求に適切に対応できるよう、法的なサポートを提供しています。以下は、当事務所が提供する具体的なサポート内容の一例です。
(1)労働時間の管理に関するアドバイス:労働基準法や働き方改革関連法に基づく適切な労働時間の管理方法についてアドバイスを提供します。労働時間の記録方法や勤怠管理システムの導入に関する支援も行います。
(2)未払い残業代請求への対応:未払い残業代請求を受けた場合の具体的な対応策について、迅速かつ適切なアドバイスを提供します。請求内容の確認や従業員との協議、法的対応策の検討をサポートします。
(3)労働契約書の見直し:労働契約書の内容を見直し、法的に争われにくい契約書を作成します。労働条件や残業代の支払いに関する条項を明確にし、トラブルの発生を防ぎます。
(4)裁判対応の支援:未払い残業代請求が裁判に発展した場合、訴訟や労働審判などの裁判所での手続について、対応の支援を行います。証拠の収集や書面の作成、裁判所での対応などを、弁護士の支援なくして行うことはほぼ不可能です。エースパートナーでは、建設業の労働問題を強く取り扱っておりますので、安心して裁判手続をお任せいただけます。
(5)労働基準監督署からの指導対応:労働基準監督署からの指導や処分を受けた場合、もしくは受ける可能性がある場合の対応について、適切なアドバイスを提供します。また、是正勧告への対応や労働環境の改善策の提案を行います。
未払い残業代の問題は、企業の経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。特に建設業界では、事業所と現場が離れていたり、指揮系統が複雑であったりすることから、労働時間の管理が困難なケースも多く、法的なトラブルが発生しやすい環境にあります。労働法に詳しい専門家のサポートを受けることで、適切な対応が可能となり、企業のリスクを最小限に抑えることができます。
2024年問題に伴い、労働時間の規制が厳格化される中、未払い残業代の請求リスクも増加しています。さらに、未払い残業代の時効も2年から3年に延長され、今後5年に延長されることも想定されています。今後は、これまで以上に法規制に対応した適正な労働時間管理が求められるため、労働法に精通した弁護士のサポートを活用することが重要です。労働時間管理や未払い残業代請求に関するお悩みがございましたら、ぜひエースパートナーにご相談ください。専門的な知識と経験を活かし、皆様の事業を全力でサポートさせていただきます。
Last Updated on 2024年9月12日 by ace-construction-law
この記事の執筆者 弁護士法人エースパートナー法律事務所 地元の人々が気軽に相談できる街の法律家であるとともに、豊富な事件処理経験を基に、全国の大企業や個人、官公庁からも依頼をお引き受けしています。 |