建設業における人事労務問題について

 建設業は、他業種と比べたときに、人事労務に関するトラブルが発生するリスクが高い業種であると言えます。その理由は以下のとおりです。

① 慢性的な人手不足
② 多様な就業形態
③ 危険な作業

①について

 建設業界が人出不足と言われて久しいですが、実際にデータで見てみると、全職種の有効求人倍率が1.20倍であることころ、建設躯体工事の職業9.07倍、土木の職業7.63倍(いずれも、令和4年3月、東京)となっております。

 ※有効求人倍率とは、簡単に言うと、仕事を探している人一人当たりに何個の仕事があるかを示した数字です。

 人手不足は、慢性的な長時間労働をもたらし、そこから、残業代の不払い・事故の発生といった人事労務トラブルが起こり得ます。

②について

 建設業の現場で働く方は、多様な契約形態の下で、働いていることが多いです。正社員、契約社員、アルバイト、日雇い雇用など、さらには、下請業者が雇用している労働者も同じ現場で働いているのが通常です。

 どのような契約の下で働いているかによって、適用される法令、ルールも変わってきます。トラブルになった際、それに応じて適切な対処をしなければ、状況はさらに悪化してしまいます。

③について

 建設業の現場は、どうしてもある程度の危険が伴います。そのため、労働安全衛生法等の法令で様々な基準が定められており、労働者の安全には配慮がなされています。しかし、一たび事故が起こった場合、死亡も含めた重大事故になることが多く、その際に労災保険で全ての損害をカバーできればよいですが、そうでない場合、労働者が損害の賠償を求めて、会社を訴えてくることもあり得ます(労災民訴)。

 

人事労務問題を弁護士に相談すべき理由

 上記のように、建設事業者様は、潜在的に様々な法的リスクを抱えていると言えます。そのような中では、会社の外部に相談できる専門家を準備しておくことが重要です。特に中小の建設事業者の場合、税理士、社会保険労務士、行政書士といった専門家とお付き合いがある場合が多いですが、相談できる弁護士も準備しておくことをお勧めします。

 なぜなら、上記専門家たちの中でも、法律の専門家は弁護士だけだからです。決算や税金のことは税理士に、社会保険や労働保険のことは社会保険労務士に、建設業に必要な許認可については行政書士に頼んでいる業者様が多いと思いますが、それと同様に、法律に関する問題は、弁護士に頼みましょう。

 

弁護士による法的対処法

 弁護士は、実際にトラブルになったときに役立つだけではありません。むしろ、トラブルを起こさないためにこそ役立つものです。雇用契約書の締結や就業規則の作成に関与することで、退職トラブル・賃金(残業代)トラブルを未然に防ぐことができます。また、慎重に進めなければならない退職勧奨や解雇といった手続についても、弁護士のアドバイスを逐一受けながら進めていくことで、円満な形で終えることができます。

 このように、トラブルになる前の段階から労務管理に弁護士が関与することは、トラブルになった後でも効果を発揮します。どれだけ適切な労務管理をしていたとしても、裁判や労働審判を起こされることはあり得ます。そんな時、普段から労務管理に携わっていた弁護士が裁判等の対応をすれば、従来からの経緯を理解している分、的確な対応ができるのです。

 

弁護士に相談するメリット

 以上のように、平時の労務管理の段階から弁護士を関与させていくことが、人事労務に関する法的リスク軽減のためには重要です。特に、建設業のように人事労務に関する法的リスクの高い事業者様では尚更です。

 さらに、労務管理で相談できる弁護士を見つけておけば、労務以外のトラブルの際も安心です。特に建設事業者様では、工事トラブル・下請元請トラブルなども多くみられます。そういったトラブルの際も、トラブルになってから慌てて弁護士を探すより、普段から相談している弁護士の方が、スムーズな問題解決につながります。

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Last Updated on 2023年10月4日 by ace-construction-law

この記事の執筆者

弁護士法人エースパートナー法律事務所

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