労働審判対応

労働審判とは

労働審判は,未払賃金・解雇といった会社‐労働者間のトラブルを,迅速,適正かつ実効的に解決することを図る,裁判所を通して行う手続です。労働審判には,主に以下3点の特色があります。

①迅速性

訴訟の場合,その審理期間は事案の複雑性等にもよりますが,一般的に約1年半ほどと言われており,裁判所の判断が出されるまで長い時間がかかることが少なくありませんでした。

労働審判は3回以内の期日で手続が終了(初回期日で和解が成立することも少なくありません。)する制度となっていますので,訴訟と比べ,スピーディに解決させることができる手続となっています。

②労働審判員の参与

訴訟では,当事者双方の主張及び証拠を確認するのは,裁判官だけとなりますが,労働審判では,労働審判員と呼ばれる労働関係に関する専門的な知識と経験をもった方が審理に参加します。労働審判員は使用者側の審判員と労働者側の審判員からなり,それぞれ使用者側・労働者側の実情をよく知っている人が選任されています。そして,労働審判員も当事者双方の言い分を確認するので,より実情に即した結論が出されることが期待されています。

③柔軟な解決が期待されること

訴訟では,原告と被告双方の主張と証拠から原告の請求が認められるか,裁判官が判断する手続きとなりますが,労働審判では,双方の主張証拠を確認した後,まずは裁判官と労働審判員を入れて話合いによる解決(調停)が試みられ,話合いによる解決ができない場合は,労働審判を行うという二段階で構成されるため,事案の実情に応じて柔軟な解決が期待できます。

 

労働審判対応のポイント

上記特色を読むと,労働トラブルに直面して裁判所を通した手続を利用する必要が生じたときは訴訟ではなく,労働審判を利用した方が良いように感じてしまうかと思いますが,以下の2点に注意しなければ,却って会社にとって不利益になる可能性があります。

①徒労に終わる可能性

労働審判期日内で話合いによる解決ができない場合,労働審判が出され,異議申立てが出されなかった場合は,審判が確定し紛争解決に向かうことになりますが,当事者の一方が異議申立てを行うと審判は失効し,自動的に訴訟に移行することになります。

労働トラブルに関する任意交渉の状況を踏まえ,双方の主張に隔たりがあり,双方に譲歩の余地がないことが明らかであるにもかかわらず,『労働審判であれば早期にトラブルを解決できる!』と同手続を安易に利用してしまうと,話合いによる解決はおろか労働審判にも異議申立てが出され,結局訴訟に移行し,却って解決までの時間がかかってしまう可能性が高くなることがあります。

②短期集中的に申立て(または答弁)の準備をする必要があること

制度が迅速に解決を図れるというものであるということは,裏を返すと当事者は主張及び証拠の提出を短期集中的に行う必要があるということです。訴訟と比べると申立て(答弁)までの負担が大きくなり,不十分な主張・証拠の準備しかできなかった場合,裁判官や労働審判員に会社の主張を理解してもらえず,争点も適切に把握されず十分な審理が尽くされない可能性があります。

 

弁護士による労働審判対応

弁護士が会社の代理人として労働審判手続きの対応をする場合,基本的に以下のような流れになります。

 

①紛争に関する経緯,事情の聞き取り,関連資料の確

②申立書又は答弁書の作成,証拠の準備

↓(申立てから40日以内に第1回期日が指定されます。)

③期日の出席

↓(労働審判は,代理人がついているかにかかわらず,会社の代表者,責任者,担当者等も可能な限り出席する運用となっており,裁判官・労働審判委員から紛争について質問をされるので,直接お話をしてもらうことになりますが,法的事項など必要に応じて弁護士がサポートを行います。)

④和解の成立(和解の条件について会社のご希望を伺いつつ,裁判官に会社側の和解条件を回答し,相手方との話合いを行います。相手方との間で条件面で合意が調えば,和解成立となります。)

 

弁護士に相談するメリット

労働審判は言わば労働審判員を間に入れた,会社と労働者との話合いの場となりますが,上記のとおり,早期紛争解決のため期日が最大3回と定められているうえ,本件の争点に関する心証形成は第1回期日時点で済ませてしまい,第2回期日以降に五月雨式に新たな主張や証拠の提出をすることを原則認めていない裁判所も少なくありません。裁判官や労働審判員に会社の言い分を短い期間で分かってもらうためには,第1回期日までにピンポイントな主張と証拠の提出をコンパクトに行う必要があり,そのためにトラブルに関するあらゆる事情や資料を分析しなければならず,会社が事業活動の傍ら労働審判手続きの十分な準備を行うことは決して容易ではありません。

弁護士にご相談いただければ,専門家の観点から,労働審判手続きに主張すべき事実や提出すべき資料を精査し,それをもとに会社の言い分を第三者にわかってもらえるよう工夫・整理した書面をお作りすることができるので,万全な準備をして労働審判期日に臨むことができます。

また,現在の法的トラブルについて,

「労働審判を申し立てようか考えているけど,話合いがまとまらず結局訴訟になってしまい,時間の無駄になるのが心配・・・」

ということでしたら,ご事情をお聞きしたうえで,労働審判を申し立てることがトラブルの解決方法として適切かどうかアドバイスさせていただきます。

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Last Updated on 2023年10月4日 by ace-construction-law

この記事の執筆者

弁護士法人エースパートナー法律事務所

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